玲瓏庵
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玲瓏庵」から孤児風情が離界。 (02/02-23:17:26)
孤児風情>【一頻り乾いた音をひびかせて、すん、と息をついた。どうやら、此処を無人だと判断したようだ。事実が違ったとしても、これだけ音を立てたのだから――傍目にたいした音でなくても――、いいのだろうと思ったのかもしれない。一番上の段木から、そっくり縁に乗り上げてしまって、屋根の下。もう一度息をついた。細く長い、溜息によく似たそれ。かがめた身をさらにかがめて、四肢を追って丸くなる。そのものけものが眠り込む姿勢のまま、一見するとぼろきれの塊に見えなくもないかたちで、寝息を立て始めた。 やがて朝日が昇るなら、その襤褸切れの至る所がやたらと焼け焦げている事。ぼろきれどころか当人の肌が所々黒く、煤けている事。髪の端が焼き切れている事が明るみになるのかもしれない。全ては翌日の話にて。】 (02/02-23:17:23)
孤児風情>―――― 【境内をわたりきり、段木をのぼって、縁に上がり込んだところで、膝を折った。】 ―――― 【ようやく身をかがめる。周囲を見渡す。そのまま平手で、無造作に床を叩いた。ぱちん、と空気を割って響いたのは、大して大きくもない音だ。痩せた腕ならなおさら響くはずもない。よしんば本人がそれを、うかがいか何かのつもりだったとしても。】 (02/02-22:47:29)
孤児風情>【夜陰に薄灰を引き摺りながら、まるく角を落とした石を踏んで鳴らしながら、痩躯は物珍しそうに広がる景色を見渡した。そうしてもう数歩、痩せた足で玉石を踏む。不安げな様子はなかった。どちらかというと、頭のてっぺんまで引っ張り被ったようなフードとも呼べない灰色布の、その隙間から見える紫色は、まあるく瞠られていた。その眸が輝いていさえすれば、ねこのような、とも呼べたかもしれない。】 (02/02-22:46:12)
孤児風情>【夜半。玉砂利を無遠慮に鳴らして、痩躯はふらりと迷い込んだ。】 ―――― 【灰色のそまつな、身の丈に合っていない引き摺るような、その割に所々に寸足らずで肌を覆いきれていない布は、かろうじて服と呼べるもの。其れと同じく、痩躯も又、かろうじて人と呼べるような成りをしていた。夜闇にいびつに浮かぶ灰色は、もしかしたらこの時期に相応しい幽鬼にまちがえられても、なんら不思議ではない仕草にて。】 ―――― 【ただ、玉砂利を踏む足の音だけが、其れがもつ唯一の生者のあかしだった。】 (02/02-22:30:13)
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